間接照明で魅せる、癒しと機能美のリノベーション術
2025.06.27

~住まいの空気を変える“光の魔法”~
リノベーションは、住まいを見た目だけでなく「感じ方」まで変える、魔法のような手法です。中でも、空間の印象を劇的に変える要素として注目を集めているのが「間接照明」。ただ明るくするだけではない、“光で魅せる”空間づくりが、今、多くのリノベーション事例で取り入れられています。
この記事では、間接照明の魅力と、実際の取り入れ方、空間別の活用ポイント、そして施工時の注意点など、プロの目線から深掘りしてご紹介します。
間接照明とは?直接照明との違い
まずは基本的な知識から。
「間接照明」とは、壁や天井などに光を反射させて空間を照らす照明方法です。照明器具が直接視界に入らず、柔らかな光が空間を包み込むのが特徴。一方、天井から部屋全体を明るくする「直接照明」は、機能的である反面、光が強すぎたり陰影が単調になりやすいという側面もあります。
間接照明は、視覚的な疲れを抑え、居心地のよい雰囲気をつくるのに最適。リビングや寝室、廊下など“癒し”が求められる空間では、間接照明が圧倒的な力を発揮します。
間接照明がもたらす5つの効果

空間を広く見せる:コーブ照明の活用で天井の“抜け感”を演出
間接照明の中でも、天井や壁面を照らすことで空間に“奥行き”と“高さ”を感じさせる手法は、狭小住宅やマンションに特に効果的です。
代表的なのが「コーブ照明(cove lighting)」で、天井際に照明を埋め込んで光を天井に向けて反射させることで、天井の“存在感”をぼかし、開放感のある空間に見せられます。
ポイント:
- 反射光が柔らかく空間全体を包み込み、照明の直接的な眩しさを避けられる
- 梁や天井段差をうまく活用すれば後付けでも設置可能
- 床照明やフロアライトと組み合わせると、視線誘導によってより広さを強調
高級感の演出:光と影のグラデーションが生む上質さ
間接照明は、単に“明るくする”のではなく、素材の陰影や質感を際立たせることで、高級感を演出できます。
たとえば、石材や木材、左官仕上げなどの表情豊かな壁面に間接照明を当てると、光と影のコントラストがその魅力を最大限に引き出します。
ポイント:
- 壁面照明(ウォールウォッシャー)で素材の風合いを引き出す
- 光源が直接見えない設計にすることで、上質な雰囲気に
- ホテルライクな演出では暖色〜中間色の照明色が有効
癒しとリラックス効果:夜の“余白”をつくる光
間接照明は、直接光に比べてコントラストが柔らかく、目に優しく精神的にも落ち着く空間づくりに適しています。
特に暖色系の照明(2700K前後)を使うことで、夕暮れやキャンドルのようなぬくもりが生まれ、副交感神経が優位になりやすい環境が整います。
ポイント:
- 寝室やバスルームに適した照明手法
- スマート照明との組み合わせで時間帯に応じた光の調整も可能
光量は控えめに設定し、リラックスを誘導する演出を
動線の明確化:フットライトやステップ照明で安全性アップ
特に夜間、廊下・階段・トイレへの動線を明確にする照明計画は、安全性と快適性を兼ね備えます。
照明の“誘導効果”を利用することで、自然な移動経路が生まれ、暗くても安心して行動できる空間に。
ポイント:
- 人感センサー付き照明で無駄な電力消費を防止
- 床面に近い照明(例:フットライト)は影を落としにくく安全
- 乳白カバーの使用でグレア(眩しさ)対策も忘れずに
空間のゾーニング:光の“性格”を変えてシーンを分ける
広い空間をエリアごとに“使い分ける”には、壁や仕切りではなく照明によるゾーニングが非常に効果的です。
たとえばLDKでは、ダイニングには温かみのあるペンダントライト、リビングにはリラックス重視の間接照明を組み合わせることで、空間にメリハリとストーリー性が生まれます。
ポイント:
- 一つの空間に複数の光の方向性・強さ・色温度を配置
- ディマー(調光)機能を活用してシーンに応じた明るさ調整
- 照明計画は家具配置や生活動線とセットで検討すると効果的
空間別・間接照明の取り入れポイント
リビング
家族が集うリビングには、天井際のコーブ照明と壁面のブラケットライトを組み合わせて。光の重なりが“層”を生み、空間に奥行きとドラマを与えます。
寝室
ベッドヘッド側に壁を照らす照明を仕込むと、入眠前のリラックスタイムにぴったり。調光機能付きなら、その日の気分で光量を調整でき、より快適に。
キッチン
間接照明=装飾的、というイメージがあるかもしれませんが、実用的にも使えます。例えば、吊り戸棚下に手元灯として間接照明を仕込むことで、作業しやすく、見た目もスマートに。
洗面所・バスルーム
洗面ミラーの裏にLEDを仕込むのが定番。顔に影ができにくく、スキンケアやメイクもしやすいです。バスルームでは天井間接照明で、まるでスパのような空間に。
間接照明リノベの施工ポイント

間接照明は、後から取り付けるよりもリノベーション時に組み込むのが断然おすすめ。なぜなら、照明の位置や角度、配線ルート、器具の仕込みスペースなど、建築との連携が重要だからです。
特に注意すべきは以下の点:
- 照明器具の熱対策(LED推奨)
- 天井裏や壁内のスペース確保
- 配線・スイッチ計画(複数系統を分けると便利)
- メンテナンス性の確保
これらをあらかじめ考慮しておくことで、デザイン性と機能性を両立した空間が実現します。
まとめ:光で暮らしに「ゆとり」を

間接照明は「照らす」から「演出する」へ
間接照明は、光源を直接見せず、壁や天井に反射させて柔らかく空間を照らします。
ただ明るくするのではなく、**感情や感覚に働きかける“光の演出”**です。
暮らしに作用する“光の効能”
① 心を整える
やさしい光に包まれると、自律神経が整いリラックス効果が。
「明るすぎない快適さ」が心に余裕を生みます。
② 美しさを引き出す
素材の凹凸や質感が、陰影によって引き立ちます。
木や漆喰、タイルの魅力も、光でさらに美しく。
③ 空間にストーリーを与える
光の配置が視線や動線を導き、空間に役割を与えます。
リビングは団らん、寝室は安らぎ、キッチンは集中と、シーンを彩る光が暮らしを整えます。
リノベーションと照明計画:価値を高める鍵
リノベーションは「居心地の再設計」。
照明の工夫次第で、広さ・高級感・機能性が大きく変わります。
間接照明は、構造に組み込むことが多いため、リノベーション時がベストタイミング。
天井の段差や壁の演出と組み合わせれば、空間そのものが光のデザインになります。
心豊かな暮らしを叶える「光」
照明は空間の“最後の仕上げ”であり、“最初の感動”です。
優しい光に包まれたときの安らぎは、暮らしを満たす静かな力になります。
最後に
間接照明は、住まいの質を支える重要な要素。
リノベーションを機に、光にこだわることで暮らしにゆとりと美しさが生まれます。
ご希望があれば、空間に合わせた照明プランや製品提案も承ります。お気軽にご相談ください。